自社株は相続税申告の中でもその評価が土地と同様に難しいものです。自社株の評価額だけで数千万円となる場合もあり、自社株対策(いかに評価額を引き下げるか)、事業承継対策(いかに後継者に自社株を渡すか)を生前に対策し、実行することが重要です。

今回の自社株の評価は、銀行借入に対して金利スワップしている会社です。銀行から5億円の借入れがあり、変動金利で調達していますが、将来の金利上昇リスクに備え、金利スワップでヘッジしています。

企業会計上、課税時期にデリバティブ取引のみなし決済により評価損を計上し、金利スワップ負債を負債に計上しています。

今回のポイントは、自社株の純資産価額の計算において、この金利スワップ負債を資産から控除できるかどうかです。

貸借対照表の負債に計上している金利スワップ負債は、自社株の純資産価額を計算する際に資産から控除することができますか。
取引相場のない株式を純資産価額方式により評価する場合における「負債」は、本来被相続人が直接負担する「債務」の既定を準用して、原則として「課税時期現在における評価会社の負債で確実と認められるもの」に限られます。
金利スワップ負債は、金利スワップ取引について法人税法の規定に基づきみなし決済を行った結果生じた評価損の反対勘定として計算上生じた負債に過ぎず、純資産価額方式の適用上「負債」として取り扱うことはできません。
これと同様に評価益が生じたことにより計上される「金利スワップ資産」は純資産価額方式において「資産」には該当しません。
なお、金利スワップ取引自体は、取引の内容を個別に勘案して、財産評価基本通達に定める評価方法に準じて別途評価します。