地主の方の場合、管理法人を設立し、賃貸マンションを管理法人で新築し、土地については借地権の認定課税を回避するための無償返還届を提出するのが一般的です。

 今回の相談は、土地所有者(X)がその同族会社(Y社)に土地を賃貸し、Y社が賃貸マンションを15年前に新築していました。その際、無償返還届を税務署に提出し、地代は通常の地代(固定資産税の3倍相当)で支払っています。このたび、この賃貸マンションを土地を一括で第三者に2億円で売却することになり、X、Y社の売却収入をどのように按分するかという内容です。

建物代金相当額はY社に帰属することは当然ですが、土地代金については、借地権相当はY社に帰属するのか、それとも土地代金の全額がXに帰属するのか教えて下さい。Y社がXに通常の地代を支払っており、使用貸借でないことから借地借家法の適用を受け、Y社に借地権相当が帰属するという考えもあると思うのですが。
XとY社との間では、Xがその所有する土地についてY社が建物の所有を目的とする賃貸借契約を締結していることから、Y社は当該土地の借地権を有することになります。
 したがって、XとY社のそれぞれの譲渡収入は、次のようになります。
 (X)土地の譲渡収入-借地権の譲渡収入
 (Y社)建物の譲渡収入+借地権の譲渡収入
 ここで問題となるのが、無償返還届を提出していることから「借地権の譲渡収入」をゼロと考えてよいかどうかです。
 私法(借地借家法)上はY社に借地権が帰属することになりますが、税法上ではこれとは異なり、借地権の価額をゼロとする取扱いをすることから、Y社の借地権の譲渡収入はあくまでもゼロとして処理することが合理的であると考えられます。