市街地の中にある山林(市街地山林)の相続税評価は非常に難しいです。財産評価基本通達では、市街地山林の価額は、その山林が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から、その山林を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費相当額(整地、土盛り又は土止めに要する費用の額)として国税局長が定める金額を控除した金額に、その山林の地積を乗じて計算した金額によって評価することとされています。いわゆる「宅地比準方式」というもので、宅地造成費が控除されるとしても相当の評価額になってしまいます。

 ただし、傾斜度が30度を超える土地については、「宅地造成費の金額表」によって算定することが不適当と認められる場合に該当し、個別に評価することになります。通常は、「純山林」として評価し、宅地比準法式では評価しません。

 今回相談を受けた山林の評価ですが、まず市街地の中にあり、市街地山林に該当します。ただ、急斜面のため、傾斜度が30度を超えるのであれば「純山林」として評価できます。ポイントは、傾斜度はどのように測定するかです。

市街地山林の相続税評価額を計算する際の傾斜度はどのように測定すればよいでしょうか。
傾斜度の測定は、
(1)傾斜度を測定する起点は、標準的な平坦地の地表とし、傾斜の頂点は評価すべき土地の頂点が奥行距離の最深地点にあるとした場合のものとすること
(2)標準的な平坦地の地表は、評価すべき土地の最も近い道路面の高さとすること
(3)傾斜の度合いが異なる多面的な土地についての傾斜度は、それぞれの面の平均値とすること
により、その評価する土地の平均的な傾斜度を求めるべきと考えられます。
 傾斜度が30度を超える場合には「宅地造成費の金額表」で宅地造成費が計算できないため純山林で評価することは問題ありません。
 問題となるのが傾斜度がたとえば29度にように30度を下回る場合です。このように若干30度を下回るというだけで純山林としての評価が否認され、宅地比準法式で評価しなければならないというのあまりにも杓子定規すぎます。
 国税不服審判所の裁決例でも30度を下回る場合で、「この土地を宅地として開発する場合には、搬出土砂の処分費、伐採、抜根費など多額な造成費を要すると見込まれ、また、仮に多額な造成費を投下して宅地に転用したとしても、宅地として利用するための十分な地積を確保することはできないと認められ、開発後の土地に宅地としての客観的な交換価値があると認めることはできない。そうすると、当該土地を評価基本通達の各定めを適用して評価する場合には、宅地比準方式によることになるのであるが、開発後の当該土地に宅地としての客観的な交換価値を見いだせない限り、この方式により当該土地を評価することは、その結果において、当該土地の適正な客観的な交換価値とかい離した価額を導くことになるから、当該土地には、当該通達の各定めを適用して評価することに特に不都合と認められる特段の事情があると解するべきである」として、宅地比準方式を否定した例があります。納税者は評価額をゼロと主張し、課税庁は1,174万円と主張しましたが、結果は12万円となりました。
 
 このように市街地山林でも純山林に準ずる評価が認められるケースがあり、特に急斜面の山林については評価額を下げることができる場合があります。