相続で取得した不動産を売却した場合の相続税取得費加算の特例

不動産を譲渡した場合の譲渡所得税の計算は、まず、売却代金から取得費・譲渡費用を控除して譲渡益(所得)を計算します。
相続で取得した不動産を売却した場合には、その納付した相続税のうち一定額を取得費に加算し、売却代金から引くことができます。この特例は、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却していることが条件となっており、3年経過後に売却するとこの特例の適用は受けることができないため、注意が必要です。
また、取得費に加算できる相続税額は、たとえば、売却した者が相続した財産が預金4,000万円、土地6,000万円、合計1億円で、納付した相続税が2,000万円の場合、その土地を売却したときの加算額は2,000万円×6,000万円/1億円=1,200万円です。
つまり、相続税の全額を差し引くことができるわけではなく、売却資産の取得財産に占める割合に相当する分が対象となります。
さらに売却した資産が土地である場合には、控除できる相続税額の加算額に特例があります。

上記の例で相続した土地が土地A1,500万円、土地B4,500万円の場合で、土地Aのみ売却した場合の相続税額の加算額は、2,000万円×1,500万円/1億円=300万円となるのでしょうか。 また、土地A(短期譲渡)と土地B(長期譲渡)の両方を売却した場合、短期譲渡の方が税率が高いので相続税額の加算額を短期譲渡から優先的に控除し、節税することは可能でしょうか。
相続で取得した財産を売却した場合の相続税額の取得費加算額は、原則として、納付した相続税額のうち売却した財産の取得財産に占める割合に相当する分が対象となります。

ただし、売却した財産が土地の場合には特例があり、取得費加算額は、(納付した相続税額×取得した土地の合計/取得財産)で計算した金額とすることができます。つまり、売却した土地に対応する相続税額に限定されず、取得した土地の全部に対応する相続税額とすることができます。

上記の例で土地Aのみを売却したとしても、その取得費に加算することができる相続税額は、2,000万円×6,000万円(土地Aと土地Bの合計)/1億円=1,200万円とすることができます。この土地の特例は、実務上非常に重要なポイントとなります。

次に2以上の土地を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例の適用順序ですが、譲渡した順に適用していき、短期譲渡と長期譲渡がある場合には、短期譲渡から適用することが原則です。ただし、これと異なる順序で納税者が申告した場合はそれを認めることになっています。
したがって、譲渡所得税が最も少なく済む順序で適用した方が有利となり、土地Aの短期譲渡の計算で取得費加算額1,200万円を適用し、譲渡収入から控除しきれない部分が残れば、土地Bの長期譲渡から控除します。