相続税申告を多数行っていても土地の評価では毎回頭を悩まされます。

 いま依頼を受けている相続税申告でも土地の評価が問題となりました。土地の評価は、その接道している道路に設定されている路線価で評価することが原則です。しかし、私道に接道している土地のように路線価が設定されていないケースもあります。
 
 路線価の設定されていない道路のみに接している土地を評価する必要があるときには、税務署に特定路線価の設定の申出をすることができます(評基通14-3)。公道に接道していない土地は、公道に接道している土地に比べて売却金額が2~4割ほど低くなることは一般的です。
 特定路線価を申請してみると分かりますが、公道の路線価に比べてだいたい10~15%ぐらいしか下がりません。この水準の特定路線価で土地を評価すると実勢価格よりも相当高い評価額になってしまいます。

 従来は、特定路線価を申請しつつ、公道の路線価から画地調整(不整形地補正など)を行った評価額といずれか低い方の評価額で申告することもありました。

 しかし、平成24年の国税不服審判所で、特定路線価を申請した場合、特定路線価で評価すべきである旨の裁決が出されました。特定路線価を申請するかどうかは納税者の任意ですが、申請した以上はこれで評価すべきとの制限を受けます。

 今回の相続税申告では、(1)特定路線価では評価額が相当高くなる可能性があること、(2)特定路線価の申請をした場合はそれで評価すべきであること、を説明したうで、評価額を下げるために、固定資産税路線価を用いた比準方式を提案しました。

固定資産税路線価比準方式とはどのような評価方法でしょうか。
 路線価は、国税庁が毎年設定し、相続税、贈与税申告で使用します。
 一方、固定資産税路線価は、市町村が3年に一度設定し、固定資産税の課税(土地の評価)で使用します。固定資産税路線価は、街路に沿接する標準的な土地の単位地積(1平米)当たりの価格を表示したものであり、平成27基準年度においては、価格調査基準日である平成26年1月1日時点の適正な時価を評定して付設した路線価が記載されます。路線価に各土地の形状等に応じた補正率(画地補正率)を乗じて単位地積当たり価額を求め、これに地積を乗じることで、評価額を算出します。

 相続税路線価も固定資産税路線価も設定方法は同じ考え方の元で行っています。ただし、固定資産税路線価は3年に一度しか評価替えされないため、基準年度から評価年度までの時点修正を行うことに注意が必要です。

 固定資産税路線価のもう一つの特徴としては、相続税路線価の設定されていない私道(公衆用道路)にも路線価が設定されることです。

 今回の評価対象地も私道(公衆用道路)のみに接道していて、相続税路線価は設定されていませんでしたが、固定資産税路線価は設定されていました。

20151025

 そこで、評価対象地の評価にあたっては特定路線価は申請せずに、相続税路線価100千円を固定資産税路線価(80千円、50千円)から比準調整して評価することにしました。
 特定路線価で評価した場合はおそらく8,000万円ぐらいの評価額だった土地ですが、5,000万に下げることができました。

 固定資産税路線価は、相続税申告を多数行っている税理士でも知らない人もいるようですので、一度見てみるといいでしょう。