親所有の家屋に子が増築する場合

親が所有する家屋に子が住宅ローンで増築する場合の相談です。

  このケースでの問題は、(1)贈与税の問題、(2)譲渡所得税の問題、(3)住宅ローン控除の問題があります。
贈与税の問題は、子が増築した後、家屋の持ち分をもたないと、子から親に対する贈与として、親に贈与税が課税されます。
贈与税課税を回避するためには、子の増築資金分だけ子に持ち分をもたせる共有登記を行います。子に移転した持ち分相当は、親から子に対する譲渡として譲渡所得税の対象になります。
住宅ローン控除は、住宅ローンを借りる人(子)が所有している家屋に対して増築した場合に適用が認められるものであり、子が持ち分をもっていな家屋に対して増築しても住宅ローン控除は適用できません。
通常は、子に増築資金分だけの共有持分をもたせる登記を行い、贈与税が課税されないようにしますが、住宅ローン控除はあきらめてもらうのが一般的です。
しかし、下記の手順で行えば、贈与税は課税されず、住宅ローン控除も適用できるようになります。

親の家屋(時価500万円)に子が住宅ローン1,500万円で増築します。この場合、どのような手順ですすめれば、税務上一番有利でしょうか。なお、時価500万円は、親の購入代金から減価償却した未償却残高です。
1.まず、増築前に親が子に家屋の持分5分の1を生前贈与します(持分:親5分の4、子5分の1)。この贈与に対しては、贈与税の課税対象となりますが、家屋の固定資産税評価額の5分の1相当額から贈与税の基礎控除110万円を控除できるため、贈与税はかかりません。ポイントは、増築前に子に持分をもたせることです。

2.次に、増築を行います。この増築費用1,500万円のうち5分の4の1,200万円は本来は親が負担すべき部分になりますが、今回は子が全額負担します。そこで1,200万円÷(500万円+1,500万円)の5分の3の持分を子にもたせる共有登記を行います。これにより、子から親に対する贈与税は回避できます。親は持分5分の3(500万円×3/5=300万円)を子に譲渡し、その代金は、リフォーム代1,500万円×1/5=300万円で相殺したものとして取扱います。譲渡所得税は、300万円が譲渡収入になりますが、取得費として500万円×3/5=300万円を控除できるため、譲渡所得はゼロとなり、譲渡所得税は課税されません。なお、親子間売買の場合には、居住用財産の3,000万円控除などの特例は適用できないことに注意が必要です。

3.子の住宅ローン控除は、自己が所有する家屋に対して増築したことになり、適用が認められます。