横浜市でも土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域内(いわゆるレッドゾーン)の指定が進んでいます。横浜市には急傾斜地が多く存在しており、顧問先が所有する急傾斜地の地域がレッドゾーンに指定されたものもあります。
 
 土砂災害は毎年のように全国各地で発生しており、大きな被害が出ています。その一方で、新たな宅地開発が進み、それに伴って土砂災害の発生するおそれのある危険な箇所も年々増加し続けています。そのような全ての危険箇所を対策工事により安全な状態にしていくには、膨大な時間と費用が必要となってしまいます。そこで危険性のある区域を明らかにし、その中で警戒避難体制の整備や危険箇所への新規住宅等の立地抑制等のソフト対策を充実させていくことを目的としています。

 土砂災害防止法では、土砂災害警戒区域(いわゆるイエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)とがあります。
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 ●土砂災害警戒区域
 急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域であり、危険の周知、警戒避難体制の整備が行われます。
 ●土砂災害特別警戒区域
 急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等が行われます。
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 土地の評価上問題となるのが「土砂災害特別警戒区域」に指定された場合です。土砂災害特別警戒区域に指定されると建築物の構造が規制されたり、特定開発する場合に行政の許可を得なければならなかったりと、指定されていない地域の宅地と比べて制限を受けてしまいます。

 そこで平成31年1月1日からは評価基本通達20-6(土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価)が新設され、土地の評価の際にその制限を斟酌し、評価減することなりました

評価基本通達20-6(土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価)について教えて下さい。
 評価基本通達20-6は、下記のとおりです。
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 20-6  土砂災害特別警戒区域内(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第9条((土砂災害特別警戒区域))第1項に規定する土砂災害特別警戒区域の区域内をいう。以下同じ。)となる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちの土砂災害特別警戒区域内となる部分が土砂災害特別警戒区域内となる部分でないものとした場合の価額に、その宅地の総地積に対する土砂災害特別警戒区域内となる部分の地積の割合に応じて付表9「特別警戒区域補正率表」に定める補正率を乗じて計算した価額によって評価する。


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 なお、特別警戒区域は、基本的には地勢が傾斜する地域に指定されることから、特別警戒区域内にある宅地にはがけ地を含む場合もあります。評価通達20-5がけ地等を有する宅地の評価における「がけ地補正率」の適用がある場合には、「特別警戒区域補正率表」により求めた補正率にがけ地補正率を乗じて得た数値を特別警戒区域補正率となり、その最小値は0.50となります。

倍率地域に所在する特別警戒区域内にある宅地にも「特別警戒区域補正率表」により求めた補正率を適用することはできますか。
 倍率方式により評価する地域に所在する宅地の価額は、その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて評価することとされています。特別警戒区域内の宅地の固定資産税評価額の算定については、特別警戒区域の指定による土地の利用制限等が土地の価格に影響を与える場合には、その影響を適正に反映させることとされており、特別警戒区域に指定されたことに伴う宅地としての利用制限等により生ずる減価は、既に固定資産税評価額において考慮されていると考えられます。したがって、倍率地域に所在する特別警戒区域内にある宅地については、「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の適用は受けられません。
市街地農地等が特別警戒区域内にある場合、「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の適用は受けられないのでしょうか。
 市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野(以下、これらを併せて「市街地農地等 」という。)については、評価通達において、その農地等が宅地であるとした場合を前提として評価(宅地比準方式)することとされているところ、市街地農地等が特別警戒区域内にある場合、その農地等を宅地に転用するときには、宅地としての利用が制限され、これによる減価が生ずることになります。したがって、市街地農地等が特別警戒区域内にある場合には、「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の適用対象となります。
また、雑種地の価額は、近傍にある状況が類似する土地に比準した価額により評価するところ、評価対象となる雑種地の状況が宅地に類似する場合には宅地に比準して評価することとなり、農地等に類似する場合には農地等に比準して評価することとなります。このとき、市街化区域内の農地等の価額は宅地比準方式により評価することとしていることから、市街化区域内の雑種地についても、宅地比準方式により評価することとなります。このような宅地に状況が類似する雑種地又は市街地農地等に類似する雑種地が特別警戒区域内にある場合、その雑種地を 宅地として使用するときには、その利用が制限され、これによる減価が生ずることになります。したがって、宅地に状況が類似する雑種地又は市街地農地等に類似する雑種地が特別警戒区域内にある場合には、「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」の適用対象となります。