固定資産税評価額が付されていない家屋の相続税評価

今年3月に相続税対策の賃貸アパートを新築した方が同年6月に亡くなられ、その相続税申告です。

この賃貸アパートは3月に完成引渡しを受けているため、相続税評価額は、固定資産税評価額×70%となります。通常であれば家屋の相続税評価で面倒なことは生じないのですが、今年度の固定資産税の課税明細書を見るとこの賃貸アパートが記載されていません!固定資産税は1月1日(賦課期日)に現存するものに対して課税するため、3月に新築のこの賃貸アパートは今年度の固定資産税は課税されないため、固定資産税の評価を行われておらず、課税明細書に記載されていないわけです。評価されていないので、当然のことながら区役所で評価証明を請求しても取れません!
このような場合、(1)相続税の申告期限までに固定資産税評価額が付いた場合には、その固定資産税評価額、(2)その家屋の付近にある状況の類似した家屋の固定資産税評価額を基として、その付近家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額、(3)状況の類似した付近家屋がない場合には、その家屋の再建築価額から経過年数に応ずる償却費相当額(定率法)を控除した価額の70%に相当する金額のいずれかで評価すると国税庁から公表されています。
実務上は(2)の類似家屋を探すのは困難ですので採用しません。相続税申告期限までに固定資産税評価額が付けばそれを使用すればいいのですが、それまでに申告期限がきてしまうとなると(3)によらざるを得ません。
固定資産税評価額はおおよそ建築費の50%~60%と言われています。仮に建築費4,000万円、木造住宅(耐用年数22年、定率法償却率0.114)の場合、(3)で計算すると(4,000万円-4,000万円×0.114×4/12)×70%=2,693万円
固定資産税評価額はおそらく2,000万円~2,400万円ですので、やはり高い水準になってしまいます。2,693万円で当初申告をした後で固定資産税評価額が付されたので更正の請求をして過大納付となった相続税の還付を受ければいいのではないかと考えると思いますが、このケースでは計算に誤りがあった訳ではないため更正の請求は却下されると思われます。

更正の請求が認められないかもしれないとすると、上記以外の方法で財産評価できないでしょうか。固定資産税評価額にできるだけ近い水準となることを希望します。
今回の相続税申告は、次の2つの方法を考慮して財産評価します。

固定資産税評価額は、市町村の実地調査を受け、翌年3月31日に評価額が決定されます。評価証明書は3月31日以降にならないと取得できませんが、実地調査を市町村と協議し、早急に実施してもらいます。家屋の固定資産税評価額は下記の算式により計算した金額となりますが、経年減点補正率、評点1点当たりの価額は固定資産評価基準に定められているため、再建築価格評点数さえ分かればおおよその評価額が計算できます。
(算式)家屋の固定資産税評価額=再建築価格評点数×経年減点補正率×評点1点当たりの価額
再建築価格評点数は翌年3月31日にならなくても役所にて教えてもらうことができます。

次に、登記の際の登録免許税は固定資産税評価額を基に計算しますが、家屋を新築し固定資産税評価額が付されていないものについては「新築建物課税標準価格認定基準表」の平米単価を用いて課税標準額を計算することとしています。 これにより計算した金額も固定資産税評価額に近い金額ということがいえるでしょう。

いずれの方法で計算しても国税庁が公表している再建築価額から償却費を控除した残額の70%相当額よりは相当低い金額に抑えられます。