相続税申告において土地の相続税評価額を引き下げる方法として、「広大地」評価がありました。

 広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。ただし、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除かれます。

 要件としては、(1)土地の地積は原則として500㎡以上であること、(2)宅地造成を行う際に開発道路(いわゆる潰れ地)等が生じること、(3)その宅地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為が戸建て分譲であることです。

 広大地による評価が適用できる場合、評価額は最大65%減額することができ、相続税の節税には非常に大きなインパクトを与えます。ただ、この広大地評価は、納税者と課税庁との間での争いが多発しています。

 理由は、(1)宅地造成を行う際に開発道路などの潰れ地が生じるかどうかの開発想定図は人によって見解が異なること、(2)その宅地の最有効活用が戸建て分譲なのかマンション適地なのか判断が難しいことが挙げられます。
 弊社では広大地評価を検討する場合は、不動産鑑定士に意見を聞き、開発想定図の作成、最有効活用方法までアドバイスをもらったうえで判断してきました。 

 また、広大地評価を適用した場合の土地の評価額は、路線価×広大地補正率×地積で計算するため、土地の字型が悪いことによる減額(不整形地補正)が適用されないという問題点もありました。

 そこで、平成30年1月1日以後に開始する相続からは、これらの問題を解決するために(1)広大地評価を廃止し、(2)地積規模の大きな宅地の評価方法が新設されました。現在、相続税申告に取り組んでいる方も500㎡以上の宅地を所有されており、広大地評価の適用は難しいと考えていた案件ですが、改正後は形式的な要件判定となり、要件をクリアしているため、地積規模の大きな宅地の評価減を適用して土地の評価額を引き下げます。

地積規模の大きな宅地とはどのような要件でしょうか
地積規模の大きな宅地に該当するかどうかの要件は、次の5つになります。
①三大都市圏の場合は地積500㎡以上、その他は1,000㎡以上であること
②「普通住宅地区」、「普通商業・併用住宅地区」であること
③「市街化調整区域」以外であること
④「工業専用地域」以外であること
⑤指定容積率が400%以上(東京都の特別区は300%以上)の地域以外であること

 これにより、広大地評価の時に頭を悩ませていた潰れ地が生じるかどうか、戸建て分譲が最有効活用かどうかは考慮する必要はありません。

地積規模の大きな宅地に該当する場合、土地の評価額はどのように計算しますか
広大地評価では不整形地補正率を適用できませんでしたが、地積規模の大きな宅地の場合は適用することができるようになります。

 地積規模の大きな宅地の評価額=路線価×各種補正率×規模格差補正率×地積 

広大地評価と比べて地積規模の大きな宅地の減額割合は大きくなったのでしょうか
 三大都市圏に所在する地積500㎡の宅地の場合、広大地評価であれば42.5%減額できていましたが、地積規模の大きな宅地の場合では20%しか減額できません。
 つまり、広大地評価と比べて、改正後は評価額がアップします。